フィリピンパブに夢を見るなかれ。「タレント」は絶滅危惧種に

フィリピン人女性と聞くと、日本に出稼ぎにきて、夜のお店で働いているイメージが強いのではないでしょうか。いまでも全国各地でフィリピンパブが看板を掲げ、陽気なフィリピン人女性を目当てに通う日本人男性もいるかと思います。今回はそんな男性たちに残念なお知らせです。最新の法務省統計によると、2018年6月時点で日本に住むフィリピン人のうち「興行」の在留資格者が443人しかいないことが分かりました。12年前の2006年には1万4千人超いたのに、なんと30分の1以下。どういうことか順を追って説明します。

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目次
  1. タレントとアルバイト
  2. 最多は「永住者」次いで「定住者」
  3. 難民申請者はアウト、留学生は?

◼️タレントとアルバイト

フィリピンパブで働く女性は在留資格によって「タレント」と「アルバイト」の2種類に分けられます。

・タレント

「興行(エンターテイナー)」の在留資格で出稼ぎにきている女性です。日本には長くても半年しか滞在できないほか、国内での職業選択に制限があり、歌ったり踊ったりするエンターテインメントの仕事にしか就くことができません。一昔前には「ジャパゆきさん」とも呼ばれていました。

相対的に若い女性が多く、母国に配偶者がいなければ、原則として未婚ということになります。

・アルバイト

「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者」といった「身分に基づく在留資格」を持っています。日本人男性と結婚したり、日本人との間に子供をもうけたことで長期滞在が可能になりました。職業選択の制限はなく、どんな仕事にも就くことができます。

日本人と結婚した場合は「日本人の配偶者等」、日本人との子供を産んで、父親が認知していれば「定住者」です。「日本人の配偶者等」から「定住者」、そして「永住者」と資格変更することもできます。つまり原則として、すでに配偶者や子供がいる女性たちです。

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◼️最多は「永住者」次いで「定住者」

法務省統計の数字をおさらいします。2018年6月の時点で日本には26万6千人を超えるフィリピン人が暮らしていますが、「興行」資格を持つフィリピン人はわずか443人で、割合は0.16%です。一方で最多だったのは「永住者」の12万8千人超。その次に多い「定住者」の5万1千人超、「日本人の配偶者等」の2万6千人超と合わせると、この3つだけで全体の8割近くを占めます。

つまりフィリピンパブに行って、隣にすごく綺麗な女性が座ったとしても、彼女はかなりの高確率で配偶者や子供がいるということです。まわりにフィリピンパブ好きな男性がいたら、このことは黙っておいてあげましょう。あるいは、善意で教えてあげましょう。

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◼️難民申請者はアウト、留学生は?

「興行」資格のフィリピン人が激減したのは、法務省の運用が厳格化したからです。「歌って踊るのがエンターテイナーなのに、なんで男性の隣りでお酌してるの?」「本来の在留資格の趣旨とは違うよね」ということで、興行の在留資格が出にくくなったのです。

最近フィリピン出身者は、日本への難民申請が多発していることでも知られます。その多くは申請期間中の就労許可目的です。しかし、フィリピン人女性が難民申請をしても、パブで働くことはできません。法務省がパスポートに貼り付ける指定書により、難民申請中は昼間の仕事なら自由に働くことができる一方、夜の飲食店や風俗店で働くことは禁じられています。

ただし、国内に2600人ほどいる「留学」資格者であれば、資格外活動許可を得てフィリピンパブで働いている場合があるかも知れません。その場合でも、週に働ける上限が28時間と決まっているので、「あの娘はいつ行ってもいるなあ」などという場合には「永住者」か違法就労を疑ったほうがいいでしょう。フィリピンパブに夢を見ても、待っているのは厳しい現実といえそうです。

この記事で参考にした法務省統計はこちら

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