三菱自やパナソニックも。技能実習認定取り消しの意外な理由とは?

三菱自動車パナソニックなど4社が25日、技能実習適正化法に基づき、厚生労働省法務省から技能実習計画の認定を取り消されたことが報道されています。日本を代表する大企業であることに加えて、個人的にはパナソニックの認定取り消し理由に驚きました。認定取り消しを防ぐにはどんなことに気を付けるべきか、詳しく見ていきたいと思います。

目次
  1. 報道内容のおさらい
  2. 認定取り消し理由は?
  3. 適正化法第16条と第10条
  4. そのほかの認定取り消し理由

◼️報道内容のおさらい

三菱自パナソニックの実習計画認定取り消しについての報道は以下の通りです。

[東京 26日 ロイター] - 法務省厚生労働省は25日、三菱自動車(7211.T)、パナソニック(6752.T)など4社に対し、技能実習計画の認定を取り消したと発表した。朝日新聞など国内メディアは、新在留資格「特定技能」の外国人について5年間、受け入れができない可能性が高いと報道している。今回、取り消しの処分を受けたのは、2社のほかアイシン新和とダイバリー。

三菱自・パナなど4社の技能実習計画認定取り消し=法務・厚労省 | ロイター

「特定技能」は「技能実習」の実質的な後継資格なので、技能実習生の受け入れ禁止が特定技能に響くのは自然の成り行きだと思います。

◼️認定取り消し理由は?

では、どのような理由で認定が取り消されたのでしょうか。FNNの書き方が分かりやすかったので、以下に引用します。

法務省によると、三菱自動車は、愛知県の岡崎製作所で、「溶接」の職種で受け入れた実習生28人に、部品の組み立てをさせていた。

また、過労自殺した男性社員に違法な残業をさせた労働基準法違反の罪で罰金刑が確定したパナソニックが、実習生82人の計画の認定を取り消されるなど、あわせて4つの会社が処分を受けた。

三菱自など技能実習認定取り消し 今後5年間受け入れできず - FNN.jpプライムオンライン

三菱自動車は「溶接」のために受け入れた技能実習生に、部品の組み立てをさせていたことが問題とされました。例外的に一度や二度させたことがあるというレベルではなく、職務として恒常的にさせていたということでしょう。

そしてパナソニックは、技能実習生そのものへの不正行為ではなく、過労自殺した男性社員(日本人と思われます)に違法残業をさせた罪で罰金刑が確定したことが、認定取り消しの理由ということです。これは一体どういうことなのか、法律の条文を確認してみました。

◼️適正化法第16条と第10条

技能実習の適正化や実習生の保護などをうたった技能実習適正化法には、実習認定取り消しについて次のような条文が定められています。

第十六条 主務大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、実習認定を取り消すことができる。
一 実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき。
二 認定計画が第九条各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。
三 実習実施者が第十条各号のいずれかに該当することとなったとき。

三菱自動車については、第16条-1の「認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき」に該当する比較的分かりやすいケースです。ではパナソニックについてはどうか。16条-3に示された第10条-2にこんな規定がありました。

第十条 (中略)
二 この法律の規定その他出入国若しくは労働に関する法律の規定(第四号に規定する規定を除く。)であって政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

つまり男性社員に違法残業させた行為によって「労働に関する法律の規定」に反し「罰金刑」に処せられたことが、認定取り消しの根拠になったというわけです。「日本人社員の扱いをちゃんとしないと技能実習生も雇わせませんよ」という政府の方針が伺えますが、一方でもしも罰金刑未満であれば、認定取り消しは無かったということになります。

◼️そのほかの認定取り消し理由

第16条にはそのほか同法第9条と第10条を引き合いに、実習認定の取り消しができるとあります。かなり長いので全ては紹介できませんが、今回のようなケース以外にも、健康保険などの不正で罰金刑が確定したり、暴力団との関係があった場合には、欠格事由に該当するようです。興味のある方はぜひ一度、条文を確認してみることをおすすめします。

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 

https://www.mhlw.go.jp/content/000328210.pdf