日本で暮らす外国人 国籍別トップ10まとめ

最近はニュースで「日本で暮らす外国人が増えている」と耳にする機会が多くなりました。2018年6月末の法務省統計によると、日本に在留する外国人は5年前から約60万人増加し、過去最多の263万7251人となっています。では一体、どんな国のひとたちが多く暮らしているのがご存知ですか?人数の多い10カ国をランキングで紹介していきます。

◼️第10位 タイ王国 5万1003人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231756j:image

微笑みの国、タイが第10位にランクイン。在留資格をみると、「永住者」が最も多く、「日本人の配偶者等」が2番目でした。

<基本データ>
・民族

大多数がタイ族。その他 華人,マレー族等

・言語

タイ語

・宗教 

仏教 94%,イスラム教 5%

◼️第9位 インドネシア共和国 5万1881人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231357j:image

第9位は同じく東南アジアのインドネシア

大多数を占めたのは、技能実習生でした。

<基本データ>
・民族 

大半がマレー系(ジャワ,スンダ等約300種族)

・言語

インドネシア語

・宗教

イスラム教 87.21%,キリスト教 9.87%(プロテスタント 6.96%,カトリック 2.91%),ヒンズー教 1.69%,仏教 0.72%,儒教 0.05%,その他 0.50%

◼️第8位 アメリカ合衆国 5万6834人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231425j:image

同盟国アメリカが第8位にランクイン。この人数には、日本の米軍基地で働く軍人などは含まれていません。「永住者」資格が3割を占めます。

<基本データ>
・言語

主として英語(法律上の定めはない)

・宗教

信教の自由を憲法で保障,主にキリスト教

◼️第7位 台湾 5万8456人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231437j:image

第7位は台湾です。法務省の統計でも、外務省の基本データでも、中国とは区別されていました。一番多いのは「永住者」です。

<基本データ>
・言語

中国語,台湾語客家語

・宗教

仏教,道教キリスト教

◼️第6位 ネパール連邦民主共和国 8万5321人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231630j:image

最近急増しているネパールが第6位です。

「留学」資格の来日者が多くなっています。

<基本データ>
・民族

パルバテ・ヒンドゥー,マガル,タルー,タマン,ネワール等

・言語

ネパール語

・宗教

ヒンドゥー教徒(81.3%),仏教徒(9.0%),イスラム教徒(4.4%)他

◼️第5位 ブラジル連邦共和国 19万6781人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231457j:image

1990年の入管法改正で、大勢の日系人が出稼ぎに来ました。彼らの多くは現在「永住者」資格を得ています。

<基本データ>
・民族

欧州系(約48%),アフリカ系(約8%),東洋系(約1.1%),混血(約43%),先住民(約0.4%)(ブラジル地理統計院,2010年)

・言語

ポルトガル語

・宗教

カトリック約65%,プロテスタント約22%,無宗教8%(ブラジル地理統計院,2010年)

◼️第4位 フィリピン共和国 26万6803人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231503j:image

東南アジアのラテン系、フィリピンが第4位。在留者の半数近くが「永住者」資格を持っています。

<基本データ>
・民族

マレー系が主体。ほかに中国系,スペイン系及びこれらとの混血並びに少数民族がいる。

・言語

国語はフィリピノ語,公用語はフィリピノ語及び英語。80前後の言語がある。

・宗教

ASEAN唯一のキリスト教国。国民の83%がカトリック,その他のキリスト教が10%。
イスラム教は5%(ミンダナオではイスラム教徒が人口の2割以上)。

◼️第3位 ベトナム社会主義共和国 29万1494人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231523j:image

有望な労働力として近年、存在感が右肩上がりのベトナムが第3位。最も多い在留資格は「技能実習」となっています。

<基本データ>
・民族

キン族(越人)約86%,他に53の少数民族

・言語

ベトナム語

・宗教

仏教,カトリックカオダイ教

◼️第2位 大韓民国 45万2701人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231531j:image

なにかとお騒がせな隣国が第2位。「永住者」資格が7万人と最多ですが、実は技能実習生も2万人以上います。

<基本データ>
・民族

韓民族

・言語

韓国語

・宗教

宗教人口比率53.1%
(うち仏教:42.9%,プロテスタント:34.5%,カトリック:20.6%,その他:2.0%)
社会・文化に儒教の影響を色濃く受ける。

◼️第1位 中華人民共和国 74万1656人

f:id:Kosuke_Ueno:20190128231558j:image

日本で暮らす外国人のなかで、一番多いのは中国人という結果になりました。第2位の韓国に30万人近い差をつけてのトップ。在留資格別にみても「永住者」だけで25万人、留学生で12万人います。

<基本データ>
・民族

漢民族(総人口の約91.5%)及び55の少数民族

・言語

漢語(中国語)

・宗教

仏教・イスラム教・キリスト教など

◼️まとめ

アメリカの順位が微妙なのと、タイがトップテンに入っていたのが個人的には意外でした。政治的理由で台湾を中国に含めてしまうと、南米のペルー(4万8266人)が繰り上がります。

日本で暮らす外国人について理解を深める一助になれば、幸いです。

今回参考にしたソースはこちら

在留外国人統計(旧登録外国人統計) 在留外国人統計 月次 2018年6月 | ファイルから探す | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

国・地域 | 外務省

日系脱北女性に日本国籍。東京家裁の「英断」は日系人救済の前例となるか

北朝鮮に生まれ、後に脱北した30代の日系人女性について、東京家裁が「日本人の娘であり、日本国籍者である」と認定し、戸籍登録許可の決定していたことが分かりました。血統主義に基づく判断とみられますが、これまでの国籍認定の常識をひっくり返すような異例中の異例の措置です。これは将来、現状では日本国籍を取ることが難しい日系人たちを救済する「前例」になるかも知れません。どういうことか詳しく見ていきましょう。

目次
  1. 報道内容のおさらい
  2. 母系だからか、父系もなのか
  3. アメリカ大陸の日系人
  4. 東南アジアの日系人
  5. 日本は彼らに門戸を開くべきか

◼️報道内容のおさらい

日系脱北女性を日本国籍者であると認めた東京家裁の判断については、共同通信が以下のように伝えています。

東京家裁は27日までに、北朝鮮で生まれ脱北した30代の女性を日本人の娘と判断、日本国籍があると認め、日本の戸籍への登録を許可する決定をした。戦後北朝鮮に渡った日本人妻の孫に当たるが、血縁関係を証明する書類はなく、家裁は女性の供述をもとに審査。「具体的で、他の親族の供述とも整合する」とし、日本人女性との親子関係を認定した。

脱北者は「邦人の娘」、家裁判断 現地生まれに戸籍登録を許可 | 共同通信

これがどれくらい珍しいことなのか、共同通信は続けています。

日本につながりがある脱北者が日本に定住する際、法務局への「帰化申請」手続きで日本国籍を得るのでなく親子関係の立証をして戸籍登録許可を受けるのは異例。専門家は「初めてではないか」(脱北者を支援する北朝鮮難民救援基金の加藤博理事長)とみる。

刮目すべきなのは「親子関係の立証をしたことで、戸籍登録が許可された」という点でしょう。この女性は祖母が日本人妻として北朝鮮に渡っている日系3世ですから、少なくとも祖父の1人は朝鮮出身ということになります。つまり外国とのミックスであっても、日本人の血を引いていることを証明できれば、血統主義に基づいて日本国籍と認められる判断が示されたのです。これは本当に画期的なことです。

◼️母系だからか、父系もなのか

ここで一つ気になるのは、彼女が日本国籍者と認められたのは、日本の血統を母系に引いていたからなのか、それとも父系であっても同じ判断だったのか、ということです。 

例えば、未婚の日本人と外国人の間に子供が生まれた場合、その母親が日本人ならば、子供は無条件で日本国籍者になれます。しかし父親が日本人の場合には「認知」の手続きが必要になります。母系のつながりは、父系に比べて親子関係の証明が簡単なためです。

それを考慮した上で、今回の報道をもう一度確認してみましょう。東京家裁の理屈は「日本人の血筋である」ということのみを明らかに重視しており、母系・父系のどちらであるかは無関係であるように読めます。血縁関係の証明は供述ベースであり、父系のつながりをDNA鑑定で示したケースよりも、客観証拠としてはかなり弱いでしょう。

つまり語弊を恐れずに言えば、東京家裁は今回、「母系であろうが父系であろうが、血統的に日本人の子や孫であれば、日本国籍者であり得る」という前例をつくったのです。

◼️アメリカ大陸の日系人

血統的に日本人の子や孫である存在としてメジャーなのは、アメリカ大陸にいる日系移民でしょう。彼らは1990年の入管法改定で、3世までなら日本人の血統を根拠に「定住者」の資格を得られるようになりました。好きな仕事に就ける自由度の高い在留資格ですが、彼らはあくまでも外国人です。

ですが、東京家裁の措置は、日本人を親や祖父母に持つ日系ブラジル人、ペルー人やアメリカ人にもそのまま適用できてしまいます。理屈の上では、彼らは日本人の血を受け継ぐことを証明さえすれば、日本国籍を取得できることになるのです。

◼️東南アジアの日系人

もう一つ、日本人の血統をもつ存在として思い浮かんだのが、フィリピンなど東南アジアにいる日系人です。その多くは日本に出稼ぎにきた女性と日本人男性の間にできた子供です。現状では、日本人の父親が認知などの適正な手続きを取らない限り、その子どもは日本国籍を取得することは出来ません。日本人の母とフィリピン人の父を持つ子供が、出生と同時に日本国籍となるのに比べると、いささか不憫に思えます。

そんな彼らにとっても、東京家裁の判断は朗報です。たとえ父親が認知してくれなくても、自分に日本人の血が流れていることを裁判所に証明すれば良いのです。これはDNA鑑定などで十分でしょう。

◼️日本は彼らに門戸を開くべきか

ここまで見てきた通り、東京家裁が脱北女性に適用した理屈を通せば、潜在的日本国籍者は世界中に大勢いることになります。たとえば日系ブラジル人だけでも160万人いると言われています。

介護現場などの深刻な人手不足によって、外国人材受け入れ待った無しの日本ですが、日本の血統を持つ彼らを、日本国籍者として受け入れれば、少なくとも労働力不足の問題は解消できるのではないでしょうか。受け入れ体制の課題は残りますが、日系人のほうが一般の外国人より文化的な摩擦は少ないかも知れません。

もちろん、実際の制度運用が私が述べたような理屈の通りにいくとは思いません。それでも、日本の抱える社会問題に一つの解決のヒントを与えたという意味で、東京家裁の判断は「英断」と評価していいと思います。

祝全豪OP優勝!大坂なおみ選手の国籍を巡る「2019年問題」とは

大坂なおみ選手が26日、テニス全豪OPで日本人として初優勝し、アジア勢としても初となる世界ランク1位を決めました。日米の二重国籍である大坂選手は現在21歳。日本の国籍法の規定によって、22歳の誕生日を迎える2019年秋までに、日米どちらかの国籍を選択しなくてはなりません。日本テニス界にとっては「2019年問題」とでも呼ぶべき大問題でしょう。国籍法や五輪憲章の規定を確認しつつ、大坂選手に今後も「日本人」として活躍してもらうためには何が必要なのかを考えてみました。f:id:Kosuke_Ueno:20190203043423j:image

目次
  1. 日本の国籍法と二重国籍
  2. 環境的には米国籍が有利か
  3. 東京五輪はどうなる?油断は禁物
  4. ずっと日本国籍者でいてもらうには

◼️日本の国籍法と二重国籍

まず、二重国籍について、日本の国籍法がどのように規定しているのかを確認します。大坂なおみ選手に関わってくるのは、第14条と第16条でしょう。

第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。

日本人の母とハイチ系米国人の父の間に生まれた大坂選手は、出生と同時に日本と米国の二重国籍になったと考えられます。その場合は22歳になるまでに、どちらか一方の国籍を選択しなければ行けません。そして、もし日本国籍を選んだ場合には、米国籍の離脱に努める必要があります。大坂選手の誕生日は10月16日なので、あと9ヶ月足らずのうちに日米どちらの国籍を選ぶのか判断しなければならないのです。

◼️環境的には米国籍が有利か

幼い頃に日本から米国に移り住んだ大坂選手は現在、米フロリダ州の施設を練習拠点にしています。日本語より英語のほうが得意なのはインタビューを見ていて一目瞭然。そして米国テニス協会から猛烈なラブコールも受けています。客観的に考えれば、彼女が米国籍を放棄して「外国人」として米国内で練習を続けることは合理的ではないでしょう。彼女が将来的に米国籍を選択したとしても、仕方のないことかも知れません。

◼️東京五輪はどうなる?油断は禁物

大坂選手には、2020年の東京五輪での金メダル獲得の期待もかかります。個人的には、もちろん日本代表として出場してもらいたいものです。五輪憲章では競技者の国籍について、以下のように定めています。

規則46付属細則1- 同時に2つ以上の国籍をもつ競技者は、自己の判断により、どちらの国を代表してもよい。しかし、オリンピック競技大会、大陸別競技大会または地域別競技大会、もしくは関連IFが公認した地域選手権大会、もしくは世界選手権大会において、1方の国を代表した後はもうひとつの国を代表することはできない。

大坂選手は2018年の国際大会に日本代表として出場しているため、この規定に照らせば2020年の東京五輪は「日本代表」として出場する以外に道はないように見えます。しかし油断は禁物。この五輪憲章の規則には続きがあります。

但し、国籍を変更した者もしくは新しい国籍を取得した者に適用される下記第2項で規定の諸条件を満たしている者は例外とする。

2- オリンピック競技大会、大陸別競技大会もしくは地域別競技大会、もしくは関連IFが公認した地域選手権大会、もしくは世界選手権大会において、1方の国を代表した後国籍を変更した者、もしくは新しい国籍を取得した者は、このような変更もしくは取得の3年後までは新しい国を代表してオリンピック競技大会に参加してはならない。但し、この期間は、NOCと関係IFとの合意およびIOC理事会の承認を得て短縮されることがあり、取り消されることもあるものとする。

JOC - オリンピズム | オリンピック憲章

つまり大坂選手が米国籍を選択すれば、3年後には米国代表になれます。それだけでは東京五輪には間に合いませんが、テニス協会の合意と国際オリンピック委員会の承認があれば、その「3年間」の縛りが短縮されることもありえるのです。大坂選手獲得に向けて米国協会が本気になれば、東京五輪時点で「米国代表」になれてしまう可能性もゼロではありません。

大坂選手は過去に「日本代表として東京五輪でプレーするのが夢」とインタビューで語っていましたから、それを見据えて日本国籍を選択する可能性は充分にあると思います。ただし東京五輪の時点で日本国籍だったとしても、その後に米国籍に変更することは可能です。例えば、東京五輪のすぐ後に米国籍に変更し、4年後の五輪では米国代表になるのは制度的に全く問題ありません。

◼️ずっと日本国籍者でいてもらうには

では、大坂なおみ選手にずっと日本国籍者でいてもらうにはどうすれば良いのか。例えば国民を挙げての応援や支援を続けることで、米国籍選択を上回るメリットを提示し続けるのも一案です。しかし最も抜本的な解決方法は、諸外国同様、ずっと二重国籍でいることを制度として認めることではないでしょうか。そうすれば、米国籍者として米国で練習しつつ、日本国籍者として日本代表でプレーを続けることが可能になります。大坂なおみ選手に限らず、外国にルーツを持つ子どもたちは日本社会のなかで今後、ますます増えてくるでしょう。彼女の活躍が、進まない、というか現状ではほとんど見込みのない日本の二重国籍議論に一石を投じてくれればと思います。

三菱自やパナソニックも。技能実習認定取り消しの意外な理由とは?

三菱自動車パナソニックなど4社が25日、技能実習適正化法に基づき、厚生労働省法務省から技能実習計画の認定を取り消されたことが報道されています。日本を代表する大企業であることに加えて、個人的にはパナソニックの認定取り消し理由に驚きました。認定取り消しを防ぐにはどんなことに気を付けるべきか、詳しく見ていきたいと思います。

目次
  1. 報道内容のおさらい
  2. 認定取り消し理由は?
  3. 適正化法第16条と第10条
  4. そのほかの認定取り消し理由

◼️報道内容のおさらい

三菱自パナソニックの実習計画認定取り消しについての報道は以下の通りです。

[東京 26日 ロイター] - 法務省厚生労働省は25日、三菱自動車(7211.T)、パナソニック(6752.T)など4社に対し、技能実習計画の認定を取り消したと発表した。朝日新聞など国内メディアは、新在留資格「特定技能」の外国人について5年間、受け入れができない可能性が高いと報道している。今回、取り消しの処分を受けたのは、2社のほかアイシン新和とダイバリー。

三菱自・パナなど4社の技能実習計画認定取り消し=法務・厚労省 | ロイター

「特定技能」は「技能実習」の実質的な後継資格なので、技能実習生の受け入れ禁止が特定技能に響くのは自然の成り行きだと思います。

◼️認定取り消し理由は?

では、どのような理由で認定が取り消されたのでしょうか。FNNの書き方が分かりやすかったので、以下に引用します。

法務省によると、三菱自動車は、愛知県の岡崎製作所で、「溶接」の職種で受け入れた実習生28人に、部品の組み立てをさせていた。

また、過労自殺した男性社員に違法な残業をさせた労働基準法違反の罪で罰金刑が確定したパナソニックが、実習生82人の計画の認定を取り消されるなど、あわせて4つの会社が処分を受けた。

三菱自など技能実習認定取り消し 今後5年間受け入れできず - FNN.jpプライムオンライン

三菱自動車は「溶接」のために受け入れた技能実習生に、部品の組み立てをさせていたことが問題とされました。例外的に一度や二度させたことがあるというレベルではなく、職務として恒常的にさせていたということでしょう。

そしてパナソニックは、技能実習生そのものへの不正行為ではなく、過労自殺した男性社員(日本人と思われます)に違法残業をさせた罪で罰金刑が確定したことが、認定取り消しの理由ということです。これは一体どういうことなのか、法律の条文を確認してみました。

◼️適正化法第16条と第10条

技能実習の適正化や実習生の保護などをうたった技能実習適正化法には、実習認定取り消しについて次のような条文が定められています。

第十六条 主務大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、実習認定を取り消すことができる。
一 実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき。
二 認定計画が第九条各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。
三 実習実施者が第十条各号のいずれかに該当することとなったとき。

三菱自動車については、第16条-1の「認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき」に該当する比較的分かりやすいケースです。ではパナソニックについてはどうか。16条-3に示された第10条-2にこんな規定がありました。

第十条 (中略)
二 この法律の規定その他出入国若しくは労働に関する法律の規定(第四号に規定する規定を除く。)であって政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

つまり男性社員に違法残業させた行為によって「労働に関する法律の規定」に反し「罰金刑」に処せられたことが、認定取り消しの根拠になったというわけです。「日本人社員の扱いをちゃんとしないと技能実習生も雇わせませんよ」という政府の方針が伺えますが、一方でもしも罰金刑未満であれば、認定取り消しは無かったということになります。

◼️そのほかの認定取り消し理由

第16条にはそのほか同法第9条と第10条を引き合いに、実習認定の取り消しができるとあります。かなり長いので全ては紹介できませんが、今回のようなケース以外にも、健康保険などの不正で罰金刑が確定したり、暴力団との関係があった場合には、欠格事由に該当するようです。興味のある方はぜひ一度、条文を確認してみることをおすすめします。

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 

https://www.mhlw.go.jp/content/000328210.pdf